2013年7月3日水曜日

羅老号開発のロシア企業ロケットが爆発:揺らぐ安全神話、ロシアの苦悩



●カザフスタンのバイコヌール宇宙基地で行われたロシアの無人ロケット「プロトンM」の打ち上げは失敗に終わった


朝鮮日報  2013/07/03(水) 09:45
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0703&f=national_0703_006.shtml

羅老号の開発に携わったロシア企業のロケットが爆発=韓国

  カザフスタンのバイコヌール宇宙基地で2日、ロシアの衛星を積んだプロトンMロケットが打ち上げられたが、直後に爆発し墜落した。

  ロケットを製作した企業が、韓国初の宇宙ロケット・羅老号の1段目のブースターを開発したロシアの企業であったことから、複数の韓国メディアが相次いで報じた。

  韓国メディアは、
 「羅老号の製作会社が作ったロケット、空中爆発」、
 「羅老号の製作に参加したロシア企業が製作したロケットが爆発」
などの見出しで伝えた。

  羅老号の1段目のブースターを開発したロシアの企業が、衛星搭載ロケットを発射したが、20秒で爆発した。
 ロケットには、米国が作った衛星ナビゲーションシステムであるGPSに対抗するためにロシアが開発した新型衛星3基が載っていたという。
 今回の打ち上げ失敗で、2億ドル(約201億円)の損失が出たとみられている。

  韓国メディアは、世界最高とされていたロシアの航空宇宙技術力への疑問が大きくなったという点で、金銭的な被害以上の打撃を受けたと指摘。
 またロシアの宇宙技術の自尊心にも傷がついたと伝えた。

  今回の事故で21日に打ち上げが予定されていた欧州の通信衛星を含めて、プロトンMロケットを利用した打ち上げの予定はすべてキャンセルされたという。



CNN、ニュース 2013.07.02 Tue posted at 16:39 JST
http://www.cnn.co.jp/fringe/35034165.html

ロシアの無人ロケット、打ち上げに失敗し空中分解

 ロシア国営RIAノーボスチ通信は2日、ロシアの無人ロケット「プロトンM」がカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から同日打ち上げられたが、打ち上げ後、間もなく墜落したと報じた。

 現時点で負傷者の報告はない。

 RIAノーボスチ通信によると、打ち上げられたロケットにはロシアの測位システム「グロナス」用の人工衛星3基を積んでいた。

 ロケットは打ち上げ後間もなく予定の軌道を外れ、炎に包まれ地面に激突した。

 プロトンMは2010年にも、3基の衛星を打ち上げようとして失敗し、太平洋上に墜落していた。

 当局は原因を調査中で、ロケットの打ち上げを停止した。

【打ち上げ動画】
http://www.cnn.co.jp/video/11258.html



JB Press 2013.07.04(木)  小泉 悠
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38154

ロシア痛恨のロケット打ち上げ失敗、揺らぐ安全神話、
カザフスタンとの関係も悪化


●ロケットの爆発をテレビで見る人〔AFPBB News〕

 7月2日、バイコヌール宇宙基地から打ち上げられた「プロトン-M」ロケットが、発射直後に墜落するという事故が発生した。

 午前8時38分、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の第81号発射台から打ち上げられたプロトン-Mは、その数秒後に姿勢を崩し、東に向かって水平飛行した後に炎上・分解しながら地上に落下した。

■数百トンの有害物質で汚染された落下地点

 ロシア側の報道によると、発射の直後にエンジンの1基が不具合を起こしたが(プロトン・シリーズの第1段目は6基のエンジンを束ねた構造になっている)、発射台直上で爆発することを避けるためにエンジンは点火後42秒間、停止できない構造になっていたため、姿勢を崩しながらも飛行を続けたようだ。

 実際、ロケットの落下地点は数百トンの有毒なUDMH(非対称ジメチルヒドラジン)で汚染されているというから、発射台上に落下していれば爆発と汚染とでバイコヌール基地は大損害を受けることになっただろう。

 また、この事故では幸いにも死者やけが人を1人も出さなかったが、1996年に発生した長征3Bロケットの打ち上げ失敗事故では村が丸ごと1つ消滅したと言われており、今回はただ幸運であったと言うほかない(実際、バイコヌール基地から最も近い都市は60キロほどの距離にあり、ロケットの打ち上げが失敗すれば直撃の可能性は十分にある)。

 もちろん、このような不幸中の幸いは喜ぶべきことではあるが、大惨事であることには変わりはない。

 何より、今回の失敗でプロトン・シリーズ、そしてロシアの宇宙アクセス能力に対する信頼性は大きく揺らいだ。

 確かにプロトン・シリーズは初期(1960~70年代)に失敗を繰り返したものの、その中で技術的信頼性を高め、近年では世界で最も信頼のおける宇宙輸送手段と見なされていた。

 特に2000年代(2000~09年)には10年間で実施した82回の打ち上げのうち、失敗はわずか4回(打ち上げ成功率は約95.1%)という成績を挙げている。

 一方、2010年代に入ると、今回と同じように3基のGLONASS衛星を積んだまま打ち上げに失敗する事例など、2012年までの3年間で3回の失敗(うち1回は部分的失敗であり、衛星の軌道投入には成功)が発生した。

 ただし、これらの事例はいずれも衛星を最終的に軌道投入するためのブリーズ-M上段ブロックに関連した事故であり、長い実績を持つ第1段目のRD-253エンジンは安定したパフォーマンスを発揮していた。

 ところが、今回の事故はまさにその第1段目で発生したものであり、それだけに大きな問題なのである。

■3基のGLONASS衛星をいっぺんに失う

 これについては今後の調査結果を待つ必要があるが、小欄で以前紹介したロシア宇宙産業の構造的問題が関連しているのかどうかが1つのポイントとなろう。

  今回の失敗によってロシアが被る損害はまだある。

①.第1に、今回の事故で飛散した破片や毒物の除去には2~3カ月を要すると見られるうえ、事故原因が究明されなければプロトンの飛行を再開することもできない。

 直近では7月27日に国際宇宙ステーション向けのプログレス無人補給機が打ち上げられる予定だったが、これは延期となる見込みである。

 有人宇宙飛行や中型以下の衛星打ち上げに使用されるソユーズ・シリーズの打ち上げは可能と思われるが、ロシアの宇宙アクセス能力はしばらくの間、大きな制限を受けることになろう。
 もしソユーズまで打ち上げ不能ということになると、ロシアのソユーズに頼っている日本、米国、欧州の有人宇宙飛行も、一時的とはいえ機能不全に陥ってしまうことになる。

②.第2に、打ち上げ失敗によってロシアは3基のGLONASS衛星をいっぺんに失ってしまった。

 GLONASSは以前、小欄で紹介したロシア版のGPS(グローバル・ポジショニング・システム)であり、24基の衛星(うち3基は予備)から構成される。

 今回の打ち上げは、寿命の切れかけた衛星の代わりに新しい衛星を打ち上げることが目的であったわけだが、予備衛星も用意されているのでしばらくの間はシステム全体の機能には問題はないだろう。

 しかし、今回の打ち上げ失敗による損害額は、60億ルーブル(約200億円)は下らないだろうとの専門家の見解がロシアのメディアでは紹介されている。

 そのうえ、信じられないことに、打ち上げに失敗した3基の衛星には保険がかけられていなかったという。

■特殊な衛星以外には保険をかけなくなったロシア

 予算削減で保険代が削られた結果、特殊な衛星以外には保険をかけないとうやり方が最近、ロシア連邦宇宙庁では横行していたらしいが、あまりに杜撰としか言いようがない。

③.3つ目の問題は、カザフスタンとの関係だ。

 カザフスタンは昨年から、UDMH燃料の有毒性を理由にプロトンの打ち上げ回数を制限する措置に出ており、ロシアとの間で政治問題になっていた。

 2013年にも、ロシア側が17回のプロトン打ち上げを申請したのに対し、カザフスタン側は12回しか認めないとの姿勢を示している。

 このほか、バイコヌールからゼニットロケットを共同で打ち上げる「バイテレク」計画を巡っても両国の関係はぎくしゃくしているところであり、今回の打ち上げ失敗でカザフスタン側の姿勢がさらに硬化することは避けられないだろう。

★.最後に、今回の件が今後のロシアの宇宙開発に及ぼす影響として以下の2点を指摘して本稿を終わりたい。

①.その第1は、宇宙産業や宇宙開発行政全体の再編議論への影響だ。

 上記の記事でも紹介したが、ロシアでは相次ぐ失敗を受けて宇宙開発の抜本的な再編についての議論が昨年夏から持ち上がってきた。

その最終的なあり方についてはまだはっきりしない部分が多いが、ロゴジン副首相(国防・軍需産業担当)などは今回の事故を受けて再編の必要性を改めて強調するなど、議論が活発化しそうだ。

②.第2に、ロシアが極東で建設中の新宇宙基地ヴォストーチュヌィの重要性はさらに高まることになろう。

 前述のように、今回の件でカザフスタンとの宇宙協力はさらにこじれることが予想されるため、外国の意向に左右されずに自由に利用できる基地が出現する意義は大きい。

 しかも同基地は、新型で純国産のアンガラロケットの運用を前提としているため(プロトンなどはウクライナ製コンポーネントに依存していた)、ロシアはソ連崩壊後初めて、独立した宇宙アクセス能力を入手することになる。

 現在の計画では、ヴォストーチュヌィ基地は2015年にも稼働を開始し、2018年にはバイコヌールで行われている有人宇宙飛行も移管される予定だ。





【「底知らず不況」へ向かう韓国】



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