2013年8月7日水曜日

韓国が罹患した恐ろしい病気、王妃様病[お姫様病]

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JB Press 2013.08.07(水)  アン・ヨンヒ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38399

韓国が罹患した恐ろしい病気、コンジュビョン
さらに怖いのが王妃様病、しかしなぜか王様病はない
 
 筆者の名前には、恥ずかしながら「姫」という字が入る。
 漢字で「姫」と書くと、日本ではよく「お姫様なんだ」とからかわれるが、韓国での「姫」は別段、お姫様ではなく、「女子」という意味である。

 同じ漢字圏ではあるが、韓国ではお姫様を「姫」という字で表さず「公主(コンジュ)」と書く。
 それに「お姫様なんだ」と言われると、韓国人としてはあまりいい気がしない。
 なぜなら韓国では「お姫様病」という言葉があり、あまり良い意味ではないからだ。

■お姫様病の餌食となる彼氏と母親の悲劇

 「お姫様病(公主病)」とは、国語辞典によると、
 「名詞:若い女性がまるで自分自身がお姫様のようにかわいくて高貴であると勘違いすることを俗に云う言葉」
とある。

 また、韓国斗山百科事典によると、
 「自分の容貌や立場などお構いなしに、まるで王宮のお姫様だと錯覚している新世代の無鉄砲な少女の心理的症状の1つ。
 こうした子供は集団の中では目立つ存在で、出たがり、目立ちたがりの一種の誇大妄想だ」
とある。

 つまり、
 「自分を童話に出てくるきれいで高貴な身分のお姫様だと勘違いする若い女性のことである」。

 韓国は、1910年大韓帝国を最後に王政はなくなり、現在では王族も貴族もない民主主義国家となった。
 だから、通常お姫様は存在しない。

 だが、少子化の世の中、女の子は誰でも家庭の中では「お姫様」、男の子は「王子様」として大事に育てられ、家の中に君臨する。

 だが、学校や社会生活をしていくうちに、徐々にお姫様だった人も普通の人に降格する。
 それが自然な流れなのだが、その流れに乗れず、思春期を迎えてしまった人たちは「お姫様病」にかかり、現実との乖離がますます広がってしまう。

 まず、お姫様病にかかると、自分はこの世で一番きれいでかわいいと思い(童話やディズニーの影響で、なぜか西洋の美女だと思うことが多い)、友だちや家族はすべて自分の身の回りを世話する世話係だと勘違いして、こき使う。

 こうした勘違いは、小さいときから家族にちやほやされて育った人に現われやすい。
 特に、「お姫様病」にかかった女性を彼女にした彼氏の運命は悲惨だ。

 お姫様には家来が必要なのだが、大体は自分のことを愛しんでくれる相手がその家来になりやすいので、彼氏や母親はその餌食になってしまう。

 末期的症状になると、自分は男性にもてると思ったり、人々の関心はすべて自分に集中していると感じるなど、ますます自己陶酔に陥りやすい。

■子供に自信を持たせるため躾をためらう

 人から「お姫様病」だと罵られるのは外見がよくないのに、自分ではキレイでかわいいと勘違いしている人の場合が多い。

 これも一種のルッキズム(Lookism:外見至上主義)ではあるが、きれいでかわいい若い女性はお姫様病にかかってもそれほど文句を言われないが、そうでない人に対しての社会の風当たりは強い。

 さて、こうしたお姫様病や王子病は韓国の少子化によりさらに強まった。
 韓国の少子化はとても深刻な問題であり、韓国の2012年の出生率は223カ国のうち、218位(1.23%)と最下位に属している。
 ちなみに、日本は204位(1.39%)である。

 少子化とともに、育児コンサルタントや育児の本に頼る親も多くなっている。
 そうした本や彼らのコメントによると、子供には自信感を持たせることが重要だという。
 だから悪さをしても子供を躾けない親が増える。

 また、子供に自信をつけさせるためについた嘘(例えば、女の子には世界一かわいいとか、男の子には世界一賢いとか)を額面通りに信じてしまった子供たちが量産された。

 幼稚園を過ぎ、小学校に入ればある程度、現実を認識し始めてもいいのに、専業主婦の母親が子供を四六時中ケアしているせいで、少しも自分で何かをすることがない。

 また、お姫様病の人が結婚をして症状が進むと「王妃様病」にかかることもある。

 王妃病にかかった女性の旦那さんは「王様病」にかからない。
 「王子様病」はあっても「王様病」はないからだ。

 なぜなら、もともと韓国は男尊女卑の国で、王様のように君臨する人は家長制度に慣れているだけで、それを社会現象と見ることはない。

■ITがお姫様病を重篤にし伝染させる

 つまり、「お姫様病」や「王子様病」という変なネーミングではあるが、実際は自己陶酔で自己中心的な子供もしくは大人の女性のことを指すのである。

 ここで、1つ気になることは自己中心的な大人の女性はお姫様病と言われ、社会的にバッシングされるが、大人の男性はそうではないということだ。
 こうした言葉による差別化が見られるのも面白い現象に思える。

 こうした「お姫様病」にかかった人たちは自己顕示欲が非常に高いのだが、まさに現代のITやブログ全盛時代は彼女たちにとって天国状態と言えよう。

 ブログでいろいろな自慢話をし、自分の美しさをアピールする。
 ブログにアップする写真の撮り方ひとつを取っても自分をきれいに見せる技を持っていると言える。

 さて、携帯電話ひとつを見てもその人がお姫様病かどうかを知ることができる。

 携帯の初期画面に家族や動物などの写真でなく、本人の写真があれば、その人はお姫様病にかかっている確率がとてつもなく高い。

 「お姫様病」は感染のおそれが多々あるので、くれぐれも感染しないよう気をつけるべきである。


Younghee Ahn(アン・ヨンヒ):
JMM、朝日新聞などでコラムを書いたことがあり、現在は国際会議の同時通訳のかたわら、梨花女子大学、ソウル同時通訳大学院大学で教鞭をとっている。