2013年8月11日日曜日

ソフトウエアの泥棒国家:韓国ソフトウェア業界の成長阻む劣悪な労働環境

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朝鮮日報 記事入力 : 2013/08/11 08:42
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/08/11/2013081100193.html

ソフトウエア企業44%が年商10億ウォン以下の零細企業
「3D(Dirty・Difficult・Dangerous)+Dreamless」の「4D業種」

 16年間にわたり企業情報ソフトウエア技術の分野で成長を遂げてきたイースウィング社が3月に廃業した。
 ペク・ナムウン元社長(52)が住んでいたソウル・蚕室のマンションは競売に掛けられ、元社長自身は今、仁川市内の姉の家で世話になっている。
 妻と子どもたちは妻の実家に行った。
 同社は社員こそ20人ほどに過ぎなかったものの、大学情報化市場においては1・2位の技術力を認められた「強い小企業」だった。
 ではなぜつぶれたのだろうか。
 IT業界の専門家らは
 「下請け・孫請けという韓国ソフトウエア業界の『生態系』における食物連鎖の中で食われてしまったから」
と話す。

 イースウイングはS大学が昨年発注した情報化システム構築事業の下請け業者になったことで危機に見舞われた。
 S大は60億ウォン(約5億3000万円)が見込まれる入札を行い、D社はこれを70%の42億ウォン(約3億7000万円)という低価格で受注した。
 D社は教務・学事管理・人事など各分野に分けてイースウイングなど3社に下請けを出した。
 イースウイングはこのうち学士管理システムを7億8000万ウォン(約6900万円)で受注した。
 ペク元社長は
 「原価を考えれば10億ウォン(約8800万円)くらいだが、競争が激しいので7億8000万ウォンで契約をした。もう二度とソフトウエア事業はやらない」
と語った。

■下請けに孫請け…クリエーティブな開発は現実的に困難

 2011年にキャリア2年目だったイさん(32)は政府発注情報化事業の中核ソフト開発を7カ月間行った。
 イさんはフリーランスのプログラマーとして人材派遣会社と契約して開発に携わった。
 行政安全部(現・安全行政部、省に相当)が傘下機関の韓国地域情報開発院を通じて発注した190億ウォン(約16億7000万円)規模の道路名住所情報化、自治体運営環境改善事業だった。

 当初、事業を統括受注したのは大企業S社。
 S社は地理情報システム(GIS)専門企業H社など5社に下請けさせた。
 このうち、H社が受注した金額は35億ウォン(約3億1000万円)だった。
 H社はこのうちソフト開発部分を分けて4業者に下請けさせた。
 下請け業者の一つ、I社は自社に割り当てられた6000万ウォン(約530万円)のソフト開発をさらに人材派遣会社W社に3000万ウォン(約260万円)で丸投げした。
 W社はイさんに2100万ウォン(約180万円)を渡し、残りの900万ウォン(約80万円)は懐に入れた。韓国地域情報開発院→S社→H社→I社→W社→プログラマーのイさんへとつながる6段階の下請け構造だ。

 こうした構造のためプロジェクトの完成度は二の次だった。
 イさんは
 「より良いプログラムを作ったとしても、もらえる金額が増える訳でもないし、仕事を早く終わらせたらほかの仕事まで背負い込む羽目になるので、時間を引き延ばして与えられた仕事だけやった」
と語った。

 ソフト開発はある一人の創造性が何千人もの共同作業より優れた成果を挙げる可能性がある分野だ。
 普通の人10人にいくら時間を与えても核物理学で使われる高次元方程式を解けないのと同じ理屈だ。
 専門家は
 「何重にもなっている下請け構造では低レベルのソフトが量産されるだけ」
と言う。

■「人材不足に借金増」…ソフト人材の77%が電算管理

 国内での事業を整理し、海外進出を検討する企業家も出てきた。
 モバイルソフト開発企業Z社のキム・サンボク社長(49)は今、同社の英国移転を検討している。
 社員30人もひとまず半分に減らす計画だ。
 Z社は09年に設立され、国土海洋部、外交部、中小企業庁など毎年10前後の公共機関が発注する維持・保守業務をしてきた有望な中小企業だった。
 キム社長は
 「環境が劣悪で人材供給がままならいため人件費が上昇、借金ばかり増えている」
と語った。

 それなりのソフトを開発すれば「大ヒット」する先進国とは異なり、韓国では学歴の高い開発者はソフト開発ではなく電算管理職になりたがる。
 大企業・銀行などの電算管理職に就職し、指示を出す立場になるのだ。
 「ソフトウエア・コーディング(software coding=特定機能を具現化するためのコンピュータ言語でプログラムを組むこと)」は嫌がる。
 情報通信産業振興院(NIPA)によると、
★.2011年現在で韓国のソフト人材は73万人だが、
★.そのうち56万人(77%)が電算室管理者だという。
★.ソフト開発者は17万人(23%)に過ぎない。

 韓国トップのソフト企業と呼ばれるアンラボ社ですら、世界市場では無名の存在だ。
 昨年の売上高1315億ウォン(約115億6000万円)のうち輸出はわずか7%に当たる87億ウォン(約7億6000万円)に過ぎない。
 それも国内市場が保てるのは、セキュリティーソフトの場合、どの国も自国の製品を好む傾向が強いからだ。
 韓国一のソフト企業でさえ「井の中のかわず」ということになる。

 11年現在、韓国のソフト企業数は計6678社。
 このうち売上高10億ウォン(約8800万円)以下の零細企業は全体の44.0%に達する。
 韓国ソフトウエア専門企業協会のイ・ジョングン会長は
 「1位でなければ生き残れないのがソフト市場。
 トップレベルの技術力が必要な航空機用ソフトなどの分野は韓国内では手も出せないのが現状だ」
と語った。



朝鮮日報 記事入力 : 2013/08/11 08:51
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/08/11/2013081100195.html

韓国ソフトウェア業界の成長阻む劣悪な労働環境

 ソウル市瑞草区瑞草洞にあるオフィステル(住居兼オフィス)の10階にあるソフトウエア開発会社STCのオフィスを先月取材した。
 広さ40平方メートルの部屋には六つのデスクがあり、記者の目にはかなり手狭に感じられた。

 この会社は昨年、デジタル映像データを自動的に仕分けするプログラム「ドクターパッド」を開発するなど、その実力は業界でもすでに認められている。
 しかし、売り上げのほとんどは孫請けとしての業務に依存している。

 昨年の業績は売上高8億1800万ウォン(現在のレートで約7200万円、以下同じ)に当期純利益が330万ウォン(約29万円)だったが、一昨年は利益が100万ウォン(約8万8000円)にとどまっていた。
 STCはソフトウエア業界で「略奪的食物連鎖」の下位に位置する下請け業者のためか、利益を出すのは構造的に難しいのが実情だ。
 発注元(甲)からIT(情報技術)業界の中堅企業(乙)が1億ウォン(約880万円)の契約を取れば、STCのようなさらにその下請け(丙)は、乙社から5000万ウォン(約440万円)で仕事を請け負う。
 丙の立場にあるSTCは求められた納期に合わせるため、人材派遣会社などから単純労働を行うフリーター(丁)を雇うという形が一般的だ。

 ひどい場合は下請け構造が5段階、あるいは6段階になることもある。
 そのためソフトウエア業界では売上高10億ウォン(約8800万円)にも満たない零細企業が多くを占める。
 その社員は自分たちの仕事を「4D」と語る。
 「3D」「汚い(Dirty)」「つらい(Difficult)」「危険(Dangerous)」を意味する言葉として一般的に広く使われているが、
 これに「夢がない(Dreamless)」がプラスされて作られた新しい言葉が「4D」だ。

 ソウルの九老デジタル団地にオフィスを構えるモバイル用ソフト開発会社のI社は、社員15人のうち結婚しているのは役員3人だけ。
  残る12人の一般社員は40代が3人、30代7人、20代2人だが、全員が独身だ。
 副社長のCさん(43)は「毎日夜11時まで仕事をするのが当たり前で、仕事が多いときは徹夜になることも多い」とした上で「土曜日や日曜日も関係なく仕事をしているが、給与は決して多くはないため、社員は結婚など考えることができない」と語る。
 韓国科学技術院(KAIST)ソフトウエアセンター大学院長を務めるキム・ジンヒョン教授は
 「下請けから孫請けへと続くソフトウエア業界の構造が原因で、韓国ではビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグのような人材を生み出す可能性が次々とつぶされている」
と指摘した。



朝鮮日報 記事入力 : 2013/08/11 08:36
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/08/11/2013081100191.html

ソフトウエアの泥棒行為に寛大な韓国



 「歌は何小節か盗用しただけでパクリだというのに、ソフトウエアの泥棒行為には寛大なのが韓国の実情だ」

 韓国ビズテックのシン・ドンソン社長は
 「当社が独自開発したソフトウエア技術を丸ごと盗まれ、会社が大打撃を受けた。
 何度も自殺しようと思ったことがある」
と振り返った。

 シン社長が1991年に創業した韓国ビズテックは、建設会社向けの統合情報システムを構築するERPソフトウエアの専門企業だ。
 2000年にサムスンSDSと韓国産業銀行による投資で、米国シリコンバレーに支社を設立した。

 順調だった同社は08年、建設業界の不況で最初の打撃を受けた。
 それに続き、同年には元常務ら3人が重要技術を持ち出し、中堅建設会社S社に移籍。
 会社は法定管理(会社更生法適用に相当)に入った。
 10年に技術持ち出しの事実を知ったシン社長はS社代表と元常務らを刑事告発した。
 政府機関の韓国著作権委員会も11年1月、韓国ビズテックのソフトウエアとS社のプログラムは類似しているとの結論を下した。
 しかし、裁判は3年近くも一審の審理が続いており、韓国ソフトウエア専門企業協会が速やかな裁判進行を求める陳情書を出した。

 韓国企業、韓国の文化は手でつかめない無形資産の価値を無視する。
 製造業、大企業主体の産業構造も一因だ。
 中小企業が優れたソフトウエアを開発し、市場に投入しても、しばらくすると大企業がほぼ同じ製品を発売するケースが相次いでいる。
 昨年12月に警察は、下請け中小企業A社の現金自動預払機(ATM)関連の技術を違法コピーしたとして、ロッテPSネットの代表ら3人を在宅のまま刑事立件した。
 警察によると、同代表はA社にプログラムのソースコードを明らかにするよう求めたが、A社が拒否したため、ひそかに入手したとみられる。

 無形資産の価値をまともに認めないため、違法コピーも深刻だ。
 ビジネス・ソフトウエア・アライアンス(BSA)によると、
 2011年の韓国のソフトウエアの違法コピー率は40%、被害額は8900億ウォン(約790億円)だった。
 違法コピー率は米国(19%)、日本(21%)、オーストリア(23%)など先進国に比べはるかに高い。



朝鮮日報 記事入力 : 2013/08/11 08:30
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/08/11/2013081100184.html

【社説】製造業活性化は「ソフトウエア生態系」から

 現代自動車の高級車「エクウス」には
 電子制御ユニット(ECU)47個と半導体チップ1000個
が入っている。
 小型コンピューター数十台分の容量の電子機器が付いているというわけだ。
 車の走行性能向上、運転しやすさ、燃費を高めるためのこうした電子機器を作動させるには、
 A4サイズ用紙で400万枚を超える分量のソフトウエアが必要だ。

 スマートフォン(多機能携帯電話端末)・テレビ・冷蔵庫の性能を左右するのもソフトだ。
 家電業界や通信機器業界では
 全研究開発費のうちソフトが占める割合が50%を上回った。
 ソフトは商品競争力だけにとどまらず、企業競争力を決定する重要な要素になった。

 しかし、韓国の製造業は製品内蔵型ソフトの開発能力が先進国に比べ大幅に低い。
 内蔵型ソフトの国産化率は携帯用通信機器15%、自動車5%、造船4%だ。
 韓国の造船業は世界1位だというが、設計をはじめ航海・停泊ソフトなど船舶の頭脳に当たる部分は全て輸入に頼っている。

 問題は、韓国国内でソフト開発人材を探すのが難しいという点だ。
 サムスン電子のソフト人材は、2008年の1万3000人から5年間で3万6000人へと、ほぼ3倍になった。
 そのうち海外人材は44%、1万6000人に上る
 国内では人材が見つからず、バングラデシュにまで研究所を建てなければならない状況だ。
 国内の主要5大学のソフト専攻学生が09年以降、25%も減っているためだ。

 若い人材がソフトを専攻しない根本的な原因は、ソフトウエアをハードウエアの付属物と考えていることや、違法な複製により産業基盤が崩壊してしまったことにある。
 ソフト企業世界上位500位以内に入っている韓国の企業は1社もない。
 応用ソフト(アプリケーションソフト)の開発に挑んだた企業はほとんど破たんし、残った企業も大企業の業務電算化の下請けをし、やっとのことでしのいでいる。

 政府や大企業は国産ソフトに対し正当な対価を支払うことに関して模範を示すべきだ。
 たった一つの良質なソフトが業界を揺り動かすようなことでもあれば、強く勧誘しなくても若く有能な人材が自然と集まるだろう。
 ソフトウエアの生態系がよみがえらなければ韓国の製造業は失速・墜落してしまう
ことに、政府・企業・国民は気付かなければならない。




【「底知らず不況」へ向かう韓国】


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